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I am the heartgazer. ACの独り言

心理的虐待サバイバーの経験や考察を執筆していきます。

「サバイバーズスター」が示す役割とその再考~「パトロン」と「ステップパーソン」

みなさん、こんにちは。omeletです。

今回は「サバイバーズスター」が表す役割と、その役割の再考を行っていきたいと思います。

 

皆さんは「サバイバーズスター」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは虐待を受けて育った命を知ってもらうための活動であり、そのシンボルマークのことです。

survivorsstar.themedia.jp

このシンボルマークは虐待を受けた人々(以下虐待サバイバー)が果たしている主な5つの役割を表しています。その役割というのは以下のようなものになります。

 

・ヒーロー

・ケアテイカー

・マスコット(ピエロ)

スケープゴート

・ロストワン

 

各役割の詳細な説明はサバイバーズスターのサイトに譲り、ここではそれぞれの役割がどのように表れてくるのか、ということについて述べて行きたいと思います。

 

基本的に前述した5つの役割というのは、虐待加害者との間での役割を示していると考えられます。そしてこれらの役割は、サバイバーズスターのサイトの言葉によると「共依存(きょういぞん)のルールを強いられることをはじめとするさまざまな虐待の中でそれは「5つの役わり」として表れます。」(サバイバーズスター, 

https://survivorsstar.themedia.jp/pages/168845/5roles)と述べられており、「共依存」の関係の中で発現するものだということがわかります。

共依存とは「アルコール依存症など問題を抱える家族がいる場合、面倒をみ続け、相手に必要とされることを自己評価のよりどころとして、その関係に依存する状態。」(大辞林, アプリ)という一つの定義づけがなされています。つまり虐待の文脈で読みかえると虐待サバイバーは、「虐待加害者に必要とされることを自己評価のよりどころとして、求められる役割を演じる」ということが言えるでしょう。

そして必要とされることを自己評価のよりどころとしているということは、「役割を果たすこと」=自分の存在意義と考える人も少なくないということが言えます。そのため幼い頃から役割を演じることを求められてきた虐待サバイバーは、虐待加害者相手ではなくてもそのような役割を演じようとする場合があります。これは前回の記事で触れた「自己肯定感」と深く関わってくるのですが、自分を肯定するために役割を果たして周りに認めてもらおうという心の動きが発生するのではと考えています。このように「5つの役わり」というのは、必ずしも虐待が行われた環境だけで発現するわけではなくその人の人生において非常に強い影響力を持っているということがわかります。

 

しかし、ここで私はサバイバーズスターの「5つの役わり」というものを改めて考えたいと思います。なぜなら、私や私の友人の話を聞くとこの「5つの役わり」に収まらない虐待経験があり、同じようなことで苦しんでいる人が他にも見受けられたからです。

具体的には、親に娯楽費などを搾取されたり、自信を失わされたり(discourageされる)というものです。私はこれらのことも「役割」として説明できるのではないかと考え、以下の2つの役割を定義しました。

 

パトロン:親の娯楽費や生活費の不足分などの補填を求められる、金銭的に搾取される役割。断ると「家族のため」、「生活のため」という脅しを受けることもある。

・ステップパーソン:ことあるごとに親に「どうせお前ができるわけない」、「そんなことやめておけ」など失敗することやできないことを期待される役割。親の精神的安定のための踏み台とされていることが多い。

 

この2つの役割は自分から進んで果たそうとする役割ではありません。むしろ親から背負わされた役割といったほうがよいでしょう。しかし、この役割から脱することはなかなか難しく、時には「親のためなら」、「自分が我慢することで家庭が安定するのなら」と消極的にですが、自らその役割を選び取ってしまうことすらあります。

これらの役割は、既存の「ケアテイカー」、「スケープゴート」の一部としても捉えることができますが、あえて別にすることで悩んでいる人が「これ自分のことかも」と虐待に気付くきっかけになるのではと思います。

 

 

他にもさまざまな虐待を受けている人がいるでしょうし、中には「自分は虐待されているのだろうか」と悩んでいる人もいるかもしれません。そういった状況の中で、「自分が受けたこういう行為は虐待だ」、「虐待の中でこういう役割を果たそうとする人間がいる」と声を上げることはそういった人々が「虐待」を認識する一助となると考えます。

今現在、「パトロン」、「ステップパーソン」というのは私一人が提唱している概念に他なりませんが、声を上げて少しずつでも認識が広がって行けばそういった加害者の行為に苦しんでいる人が楽になる助けになるんじゃないかと思います。

 

 

 

 

<筆>

omelet(@milk832omelette):毒親持ちのAC(ヒーロー・ケアテイカー・ロストワン)でセクシャルマイノリティの23歳の研究家志望。大学で社会学を学び、勢いのままAC自助グループ「ハートゲイザー」を結成。毒親やACについて社会学的に分析できないか、日々模索中。

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