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I am the heartgazer. ACの独り言

心理的虐待サバイバーの経験や考察を執筆していきます。

虐待の構造と虐待相談件数のデータ分析

こんにちは、omelet改め烏丸遼です。

今回は虐待の構造についての考察と厚生労働省が後悔しているデータに基づいた分析をお話したいと思います。

 

まず「虐待」という言葉の意味を調べてみると、「むごい取り扱いをすること」(大辞林, アプリ)とあります。では虐待という行為はどういう相手に行われるのかと考えてみましょう。例えばイメージしやすいのは児童虐待でしょうか。他にも動物虐待や、捕虜に対する虐待などが例に挙げられます。これらの例から言えることは、虐待という行為は「権力強者から権力弱者へ行われるもの」であるということです。すなわち、虐待とは両者の間に権力勾配がある場合に行われる残酷な扱いということができるでしょう。

親子関係というのは上下関係・権力関係が非常に構築されやすい環境であるということができます。なぜかというと、親は子どもを養育し教育する立場にあるためです。親は子どもに衣食住を与え、また社会に生きるために必要なことを教えます。しかしこれは裏を返せば、衣食住を取り上げること、教える立場を利用して不当に何かを強制、あるいは禁止することもできるということです。虐待をする親はこのようなことを行うことによって子どもを支配下に置こうとしたり、また養育の義務を放棄することもあります。その発現の仕方は前回も示したようにおおよそ4種類に分類することが出来ます。

児童虐待の現状」(厚生労働省, 2014)によると、これらの割合はそれぞれ

・身体的虐待:29.4%

心理的虐待:43.6%

育児放棄(ネグレクト):25.2%

性的虐待:1.7%

となっています。このデータから、子どもを支配しようとする親は心理的虐待を行っている場合が少なくない、ということができます。しかしこのデータには問題点が2つほどあると考えます。

1つ目として「2つ以上の虐待」に関しての言及がないことが言えます。例えば「身体的虐待」と「心理的虐待」が行われている場合でも、相談された虐待が「身体的虐待」飲みだった場合、その「心理的虐待」はこの統計の数に入れられていない可能性があるということです。

2つ目として、性的虐待のパーセンテージが著しく低いことが挙げられます。このことは性的虐待には暗数、つまり「児童相談所が認識できていないもの」が多いのではないかという可能性を示しています。

このことから言えるのは、現実に行われている虐待は児童相談所が認識しているものよりもかなり多い可能性があり、その内容も一種類だけではなく二種類以上の虐待が組み合わさっていることが考えられるということです。特に身体的虐待、心理的虐待は相互に関係しあっているのではないかと考えます。理由は、厚生労働省によると心理的虐待には「子どもの目の前で家族に対して暴力を振るう」「きょうだいに虐待行為を行う」というものが含まれているため、本人が直接的な暴力を受けていない場合でも違う形で「暴力」、すなわち「身体的虐待」が行われていることが少なくないと考えられるからです。

 

虐待の相談対応件数は年々増えており、厚生省によると平成26年度の相談対応件数は平成11年度の7.6倍となっているそうです。このことは単に「虐待が増えた」ということではなく「以前は虐待として認められなかったものも虐待として認められるケースが増えている」ということを表しています。1つでも多くの認識されない虐待が減り、子どもたちが生きやすい社会になることを願うばかりです。

 

 

 

<筆>

omelet〔烏丸遼〕:毒親育ちのAC(ヒーロー・ケアテイカー・ロストワン)でセクシャルマイノリティの23歳、研究家・文筆家志望。大学で社会学を学び、勢いに任せてAC自助グループ「ハートゲイザー」を結成。毒親やACを社会学的に分析できないか、日々模索中。

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