毒親と「discourage」の発話
こんにちは、omeletです。
今回は、毒親と「discourage」の発話についてお話したいと思います。
まずは私の経験談をお聞きください。
数年前、高校生だった私には夢がありました。その夢を叶えるために専門学校に行きたい、と心の中で思っていました。
しかし、当時通っていたのは地元では有名な進学校であり、大学に行くのが当たり前。家でもそう思われていました。
専門学校に行きたい、ということをなかなか言い出せなかった私は、ささやかな決意表明として模試の第1志望校に専門学校を書き、その結果を親に見せたのです。
父親は「こんなくだらないところ」と激昂し、母親は「言い返せないようじゃどうせうまくいかない」と言いました。
この親の反応には様々なことを考えさせられますが、今回は母親の「どうせうまくいかない」という発言に焦点を当てて考えていきたいと思います。
「どうせ~なんだから」というのはいわゆる「discourage(自信を失わせる)」の言い回しであるということができます。つまり、失敗や諦めを前提とした定型句ということです。この言葉のあとには、相手が失敗したり諦めた場合(そう見えた場合も含む)に「ほら、やっぱり」という発話が続くことが多いです。
私の場合も父親のあまりの剣幕と、また元々親に反抗することができなかったこともあって押し黙ってしまい、それを見た母親は「やっぱり。親の反対くらい跳ね返せないなら無理。」と嘲笑いました。
この「discourage」の発話というのは普段の会話の中でも繰り返し為されることも多く、そのため相手の無意識のうちに刷り込まれてしまうことがあります。他にも「また~したのか」、「~しても無駄」と言った発話が「discourage」の発話として挙げられます。
他の「discourage」の例としては、私は父親に幼いころから「ぶーちゃん」と呼ばれていたのですが、その結果自分の容姿に自信がなく「自分はおしゃれをしてはいけない」と思い込み、地味な服装をあえて選んでいた、ということがあります。これは直接的な文脈を使わずに自信を失わせていた例で、「呼び名」という普段繰り返し使う言葉にマイナスなメッセージを込めることによって、直接的な誹謗中傷でなくても相手の自尊心を傷つけています。
この「discourage」の発話をする毒親は少なくありません。なぜなら、毒親というのはスーザン・フォワードの『毒になる親:一生苦しむ子供』(2001, 講談社)の中で定義されているように、「子どもに対するネガティブな行動パターンが執拗に継続し、それが子供の人生を支配するようになってしまう親」(pp.9)であり、その「ネガティブな行動パターン」の一例が「discourage」の発話であるからです。「discourage」の発話は子どもに少なからず影響を与え、「支配」する―そしてそれは子ども本人の思考パターンにも影響を与えるのではないかと考えられます。
私自身、このような親の「discourage」の発話を受けて、「失敗したらどうしよう」、「上手くいかなかったらどうしよう」ということを常に考える人間に成長しました。毒親から離れても、その「discourage」の発話に「支配」されているのです。
では、この「支配」から抜け出すにはどうしたらいいのか。私は「discourage」の発話を「courage」の発話に意識的に変えていくことが必要であると主張します。つまり、自分の中の「どうせ~だから」を「きっと~できる」というように変換することが重要だと考えます。
どうしてかというと、行動する前から失敗や諦めを過剰に想定してしまうと、実際失敗した時に「やっぱり駄目だった」とその思い込みを強化してしまうことに繋がるからです。そして強化された思い込みは、他の機会にも脳裏によぎって、失敗を引き寄せまた強化される―その繰り返しを発生させてしまいます。その連鎖を止めるための「courage」の発話なのです。
仮に失敗をしたとしても、「今回は~だから駄目だった。だから次回はそこを改善してみよう。」と分析し、前向きに捉えて同じ失敗を繰り返さないことで、「discourage」の発話を極力避けることが出来ます。
もちろん、今まで毒親に浴びせられた「discourage」の発話は簡単には頭から離れないかもしれません。ですが、少しずつでも「courage」の発話に変えていくことによって、「discourage」の発話の連鎖から抜け出すことが出来るはずです。
<筆>
omelet〔烏丸 遼〕(@milk832omelette):毒親持ちのAC(ヒーロー・ケアテイカー・ロストワン)で研究家・文筆家志望。大学で社会学を学び、勢いに任せてAC自助グループ「ハートゲイザー」を結成。毒親やACについて社会学的な分析ができないか、日々模索中。
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